前回は体を正面から見た時、「くの字」の方向へ膝が曲がり、それが体のストレスとなってしまうことを説明しました。
今回は、その「くの字」を防ぐためにどのような組織があるのかを見ていきましょう。
今回も変形性膝関節症のことを 膝OAと記載しています。
横から見た時の歩きかたについて
下のグラフは、正常歩行時の歩行時の膝の曲がり具合を見ているものです。

縦軸が膝の曲がる角度、横軸が歩行周期を100%(正規化)にしたものです。
屈曲とは曲がること、伸展とは伸びることを指しています。
縦軸の膝の曲がる角度は数字が増えると、膝が大きく曲がっていることを示します。
歩行周期とは、右足が地面についてから、地面から離れて、また右足が地面につくまでを指しています。
注目のポイントは、膝は歩行周期の中で2回膝を曲げることです。
特に、最初の右足が床ついてからの膝の曲がって伸びることが非常に体にとって大切な役割を果たします。

前回紹介した、膝が「くの字」になる動作はここで起こることがよく言われています。

「くの字」を防ぐ体の組織について
ではこの最初の膝曲がりでは、膝を「くの字」にさせないように
どのような組織が働いているのでしょうか。
ここで出てくるのが、膝関節後外側支持機構(Posterolateral Corner : PLC)といわれるものです。
こちらは膝の後ろの外側にある、外側側副靭帯,膝窩筋腱,膝窩腓骨靭帯を主要な構成要素として、膝関節の内反、外旋の安定性に関与しているといわれています(杉浦ら,2016)。
膝が最初に曲がるタイミングでこの機構が機能し、また膝を伸ばす筋肉でおなじみの大腿四頭筋も「くの字」を防ぐために働いていることが報告されています。
つまり、靭帯や腱、筋(大腿四頭筋)により「くの字」歩行を防いでいるのです。
一般的な歩行と膝OAの歩行の違いについて
先ほどのグラフの通り、一般的に歩行時の膝は一度曲がり、さらに伸びる方向へ運動を行っています。
なぜこのような運動を膝は行うのか?
1:衝撃を吸収するためです。
2:吸収したエネルギーを推進に使うためです。
この膝の機能により私たちは効率よく前に歩くことができます。

さて、膝OAの方の歩行はどうなのでしょうか?

Suzuki.Y . et al.,Scientifiic Reports.2023 より作図
こちらは、膝OAの人とそうでない人の歩行時の膝の角度をみたものになります。
黒線:一般的な歩行の膝の曲げ伸ばし角度
青線:膝OAの歩行の膝の曲げ伸ばし角度
となります。
グラフの注目のポイントは比較です。
・青線の足が着く直前の膝の曲がり具合
・青線が黒線に比べ膝が曲がってから伸びる方向への運動が少ない
つまり、歩行時の膝の曲げ伸ばしがうまくできないことが、
研究の結果から報告されています。
また、この研究では、膝OAの重症度が上がるほど、
膝の曲げ伸ばしが少なく、「くの字」歩行となっていました。
これは、歩行時の膝を伸ばす力≒(大腿四頭筋)をの依存度が小さいが、
膝を「くの字」の方向へ膝を動かし、床からかかる力をへ変換した歩行を
行っていることが示唆されます(Suzuki.Y . et al.,Scientifiic Reports.2023)。
つまり、何が言いたいのかというと、歩き方が変わり、膝で行っていた
1.衝撃を吸収するための機能と2.吸収したエネルギーを推進に使う機能
が弱くなってしまっているとも考えられます。
さいごに
今回は少し複雑になりましたので、まとめてみます。
- 正常歩行では膝の曲げ伸ばしが起こる
- 床に足がつき最初に曲がった際にはPLCという機構や膝を伸ばす筋肉が、
「くの字」にならないように制御してくれている。 - 膝OAの方では膝の曲げ伸ばし角度が小さいので衝撃吸収や推進が正常とは異なる。
- 膝OAの重症化に伴い、膝を伸ばす筋力を使わず(または使えず)歩行している。
さらに「くの字」方向への悪化が大きくなる。
ザクっとこんな感じでした。
さて次回は、実際の運動についてご紹介できればと思っています!
ご成長ありがとうございました!

